社畜と作曲と読書とその他

社畜兼作曲家です。読んだ本のことなどについて、拙い言葉で書いていく所存です。

「一九八四年」ー 事実上退職して、改めて。

正解だったのかどうかはわからないし、はっきり言って、実行するからこそ苦痛が増したのかもしれない、とさえ思うけれども。

 

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

 

 

でもこの本を読むと、実行したからこそ「脱出」を考えられたのかなと思わないではない。

何かというと、「集団と同じ言葉を使いすぎない」こと。

 

 

今更言うまでも無いけれども、「一九八四年」はGeorge Orwell原作のディストピア小説。架空の1984年を舞台に、全体主義権力の中で生きる主人公を描いたお話。

 

なのだが。

 

僕はこの本を読んで、言葉の支配というものがどれほど恐ろしいかということを感じ、ぞっとした。

不要な単語を削除することによって、それについて考えられなくなる。言葉を単純化してしまうことによって、複雑なものを厳密に思考出来なくなる。

 

同じ思考をするということは、共同体への同化ということなのだと思うけど、そこへの参加がどれだけ苦痛であっても、思考を奪われて弱体化させられてしまうと、逃げ出すことすら考えられなくなったり、逃げ出しても生きていけるような他の可能性が見つけられなくなるのではないか。

 

実際、前職を退職する前はそうだった。前職は本当に苦痛しかなかったけど、「転職できるのか」「転職失敗したらどうするのか」「失敗した時に貯金が尽きたらどうしよう」とか、そんなことを考えていた。

 

結局(他の社員に嘲笑されながらも、仕事が苦痛でやる気もなくて「仕事の出来ない人間」になりながらも)、本を読んで資産運用の発想や自分について、色々の考えが得られたおかげで本当に救われたのだ。

 

じゃあ読書に救われたのではないかと思われるかもしれないが、読書を続けられたのは彼らへの同化を拒んだからで、僕にとって彼らの同化を拒むための手段は、「同じ言葉を使わない」ことだった。

 

どんな言葉か。各業界のシステムに関する用語や、いわゆるサラリーマン語のことだ。

 

・「付込」という機能を持ったシステムを開発している時、みんな示し合わせたように高頻度で使い始めた「落とし込む」「足し込む」「入れ込む」などの「~込む」という言葉

・現職で初めて聞いたけれども「○○ベース」(「正直ベース」など)

・「ほぼほぼ」

・「FIXで」

・「連携密に」

今ぱっと思いついたものだとこれくらいだろうか。

 

極めて個人的な基準であるが、これらの言葉を初めて聞いた時に「心理的に受け付けない」と激しく抵抗感を覚えたら、自分はそうした言葉を一切使わないようにする。その集団に溶け込みたいと思った場合でも、その集団でしか通じないような言葉で、それに違和感を覚えたら、その時点でなるべく使う頻度を落とそうと考える。*1

 

器用に、言葉を合わせることができる人であれば、恐らく、同じ言葉を使いつつ、自分をキープ出来るのかもしれない。(適合する集団を選択できていた、とも言えるかもしれない)

が、社会に出て最初の職場と、現職での派遣先に同化できないと思ったし、言葉を使っているうちに思考が変わってしまうのが怖くて、「言葉を使わない」やりかたを選択せざるを得なかった。

周囲に馴染めないのは、たしかに苦痛だと思う。諦めて溶け込んでしまったほうが、どれだけ楽なことか。

派遣先や前職は本当につらかった。二度と戻りたくない。*2

 

今、転職するにあたっては、今までの職選びとは違う方向性を探っており、各面接において、職務経歴の説明や志望動機の説明をしつつ、「自分の使っている言葉に相手がどの程度共感してくれているか」を見るようにしている。いくつかの企業は落とされたが、ありがたいことに面接を通過させてもらっている会社もいくつか出てきている。

 

「この人達と同じ言葉を使いたい」「この共同体に馴染みたい」「和して同ぜずの姿勢も保てている」と思えるような空気を持っていそうな会社、職務内容の選び方も、だいたい分かってきた。

 

現場の契約が切れ、月末まで有給消化期間となり、事実上無職のような状態なので、この隙に次の勤め先や働き方、自分の将来について「違和感のない言葉で」考えて活動する時間にしたいと思う。

 

そういえば、「一九八四年」のラストはあまり救いがなかったように思うけれど、明るい(?)未来を示唆する付録は、Big Brotherの「言葉」であるところのNewspeakの検証に費やされていたな。最後の最後まで、あれは言葉の戦いを描いた作品だと思った。

 

言葉といえば、もっと過激かつ露骨に、言葉を巡る戦いを描いたSFが、只今絶賛上映中だったな。

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

 

 休みの間に観に行こう。

*1:ちなみに現職は、これらの言葉遣いを除き(社内でのプロジェクトに参画できていた時期は)つらいことはなかったのだけど、違和感のある言葉を拒否することによって「和して同ぜず」の距離感を保てたと思っている。壮絶に仕事のできる社長に、それを非常に評価されていたので、仕事のできる人もしくは会社に必要な姿勢なのではないか、という仮説を持つきっかけになった。これから検証していくつもりなので、今後覆るかもしれない

*2:どういったことがつらいのか、自分の中では言語化できているつもりなのだが、長くなるので割愛