読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

社畜と作曲と読書とその他

社畜(SE)兼作曲家です。読んだ本のことなどについて、拙い言葉で書いていく所存です。

「LA LA LAND」ー誰が「夢を見ていた」か

サントラをあらかじめ聴いた状態で、それ以外の予備知識は入れずに観に行った。

正直この時点で、嫌な予感はしていた。

 

Ost: La La Land

Ost: La La Land

 

 

で、その予感は覆された。

その御蔭で、本当に感想が書きにくい。

以下、ネタバレを含みます。

 

この映画を見るに当たっては、以下の段階を踏んでいる。 

 

①トレーラーなどの予告映像を見て、「なーんだまたぞろアメリカンドリームハッピー恋愛映画なのかよ」と思っていた。

 

②サントラを聴いて「どうもそうじゃないっぽいな、切ない映画かも知れん」に変わる

 

③観終えて、「確かに切ない」、そして疑問。

 

①に関しては多くの人がそうだったんじゃないかと思う。うちの両親も、あの動画を見ただけでは、鼻で嗤っていたし、自分もそうだった。これだからアメリカのミュージカル映画は、と思って、完全に油断していた。

 

そこで②である。今の時代にはSpotifyという便利極まりないアプリケーションがあって、そのおかげでサントラを全曲通して聴くことが出来た。

それで思った。

「1番目立つ華麗な楽曲が、サントラの頭に来ているじゃないか」

もちろんJustin Hurwitzは才能ある素晴らしい作曲家であって、どの楽曲も非常に良い。編曲センスも、メロディーのセンスも高く、音楽の完成度は高い。なので、どれがメインでどれが1番の「ウリ」となる楽曲か、は正直個人の感想レベルに留まると思う。

その上で言うと、自分は"Another Day of Sun"、"Someone in the Crowd"がもっとも、映画のモチーフとしてもふさわしい楽曲であると思った。そして、その2曲はサントラの冒頭2曲を飾っていた。

目立つ楽曲、気合の入ったボーカル楽曲などをサントラの冒頭に挿れることは、ままある。しかし、多くの場合サントラの楽曲順は、映画の時系列順だと思う(少なくとも自分の知っている限り)

したがって、

「こんなに目立つ、メインモチーフみたいな楽曲を、どっちも冒頭に持ってきてしまって、この映画は2時間保つのだろうか」→「もしかしてこの映画、ごっつ切ない映画なんじゃないの」

と、結構強引に考えたわけだ。*1

 

ああ、切ない映画かも知れない、切ない思いをするかもしれない、と思って、とうとう鑑賞に踏み切った。

観終えて、まあ実際切なかった。切なかったけれども、それだけじゃないだろう。

なにせ、ミアとセブは、各々夢を叶えたのだ。その点だけ見れば、十分にアメリカンドリームだろうし、二人は十分に成功者だ。

何が問題かというと、「その点」だけじゃないというところ。それさえなければ、観終えてこんな複雑な気持ちになることもなかっただろう。

 

「選択」した結果、夢を叶えた。「個人の夢」に対して「現実的」だったのは、ミアへの態度からすると、どちらかと言えばセブだったかもしれない。*2

が、選択した結果破棄した可能性に、最後まで執着したのはどちらだったのか。

それが、この映画を観終えて感じた1番大きな疑問だった。

 

要するに、ラストのセブのバーで、彼のピアノから始まる「あり得たかもしれない可能性」は、どちらが見た夢だったのか。

 

言ってしまえば、自分はセブの一方的な夢だったような気がしている。

ミアも、同様の夢を見ていたのかもしれないが、そういう演出にしたのは監督デミアン・チャゼルという「男」なのだ。

正直に言えばセブの気持ちは分かる。同じ立場にいたとするならば、ラストシーンのようにピアノを弾きながら、自分は最後の夢を同じように見かねない。

 

この辺の、選択した結果破棄したものへの執着は、昔から男の方が強いんだろうなと思っていて、ジャズピアノで夢ならぬジャズエイジで夢を(歪んだ夢を)抱き続けた男が最後に悲劇に見舞われる名作もあるし。

 

グレート・ギャッツビー (光文社古典新訳文庫)

グレート・ギャッツビー (光文社古典新訳文庫)

 

 

夢から覚めた時、母はあっさり覚醒したが、父は号泣した、そんなシーンのある映画もあった。

 

 

日本の文学だと、

 

蝉しぐれ (文春文庫)

蝉しぐれ (文春文庫)

 

 とかかな。

 

これら全て、個人的には、女性の率直な意見を聴いてみたいと前々から思っていて、今回の「LA LA LAND」に関しても全く同じ疑問が湧いた。

過去への感傷、選択した結果破棄したものへの思い、とでも言えば良いのか。

極端な話、ミアがメガホンを取ったら「LA LA LAND」はどんなラストを迎えたのだろう。もしかすると「男はこういうのが好きなんでしょ」と同じようなラストを作り、手玉に取られてしまうかもしれないが(笑)

 

なんにせよ、セブに感情移入しまくった末、非常に切ない、けれど単純に割り切れない、結果的にラストで号泣して、変な話だが大満足した映画だった。ぜひとも色んな人の感想を聞きたいところである。

 

そういえば、劇中で流れていた”Take On Me”は、なんでここで80年代の曲が?と思ったけど、歌詞を考えたら、ひょっとしてあれも伏線だった?デミアン監督恐るべし。

*1:今にして思えば、歌詞全部翻訳してから行けばもっとはっきりわかったのかもしれないけど

*2:こういう態度をある意味、「子供」だと言うのじゃないかと思う